失敗しないメニューブックの作り方
「メニューブックの達人」はこれまで約900店舗以上のメニューブックの製作をお手伝いさせていただきました。
この経験から、率直に「改善されたら、もっと売上があがるだろう」と感じる「メニューブック」が多々あります。
こうしたメニューブックを失礼ながらも「失敗しているメニューブック」と定義するのであれば、なぜ失敗してしまうのでしょうか。
これまでの経験から失敗の要因をひも解き、今からメニューブックを新たに作りたい方や、リニューアルを検討されている方の参考になればと思い、 「失敗しないメニューブックの作り方」についてまとめました。
はじめに
「メニューブック」の前提条件
世の中にある全ての飲食店の「メニューブック」を対象にした内容ではなく、
今後「売上を伸ばし、社員やアルバイトスタッフを増やし、店舗も増やしていきたい」
という前向きな考えの飲食店の方々のための「メニューブック」である、ということです。
なぜこのような前提条件がつくのか…
よく行くやきとり屋があります。カウンター10席とテーブルが2つ、小さなお店です。オーナーとアルバイト1名でこなしている繁盛店です。
平日は仕事帰りのサラリーマン、週末になるとカップルや家族連れや友達同士などで賑わいます。
オーナーは48歳、2店舗目などを出す気は無く、地域密着で常連さんにこだわりの焼き鳥を提供しお客様に喜んでもらえれば十分、とのこと。
とても素晴らしいことです。
メニューは手書きで書いたB4サイズのペラで文字だけ、やわらかいビニールケースに入れてくるくる巻いてペン立てのようなものに入れてあります。
私はここでメニューを見て注文することはほとんどありません。消費税が上がり、少し価格が変わったぐらいでメニューもずっと一緒です。
(季節メニューは黒板を使っています)
このやきとり屋さんは、今からお伝えする「メニューブック」である必要はありません。
なぜならオーナーがこのお店の顔であり、自分の目の見える範囲でのビジネスで十分なのです。
以上の理由から「メニューブック」の前提条件を、前述で定義しました。
※なお、私は飲食店コンサルタントでもなく、飲食店を経営しているわけでもありません。
たくさんの店舗を食べ歩き、メニューを観察し、お仕事で900店舗を超えるメニューブックを製作してきた立場での意見ですのでご了承ください。
なぜ、失敗しているメニューブックが生まれてしまうのか?
この最大の理由は、作り手が満足するだけの「お客様目線ではなく作り手目線」なメニューブックを制作してしまうからです。
メニューブックの製作にあたり、コストを抑えられるところを抑えるのは、大事なことです。あれもこれも…というのは正直難しい…
ですが、肝心なのは来店されるお客様を軽視したメニューブックは、ほぼ間違いなく失敗と言える、ということを理解することです。
世の中の失敗しているメニューのほとんどが、作り手目線のひとりよがりなメニューになってしまっています。
実際の事例を見てみましょう。(※以下写真のメニューは、弊社のお客様で許可をいただいた掲載しております)
Before(「作り手目線」のメニュー):A4パウチ両面印刷
After(「お客様目線」のメニュー):グラフィックタイプ+中面印刷
業態はラーメンをメインに中華系メニューも取り扱っており、駐車場も30台以上停めることができる約50席ほどの大きなお店です。
Beforeは、ただ単にメニューをパソコンで作ってパウチしただけのメニュー。
お店からの主張も全くなく、来店するお客様はどのメニューが「ウリ」なのか、どれがおすすめなのかも分かりません。
これが「作り手目線」のメニューです。
カウンターだけのラーメン屋ならこのメニューでもいいかもしれません。
さきほどのやきとり屋と同様、いつもオーナーがカウンター越しにお客様にラーメンを提供できて、お客様の顔を見ながら商売できるからです。
しかしこの店舗は客席が50席もあり、とてもオーナーが1名で回せる規模のお店ではなく、社員もいれば、アルバイトスタッフもいます。
もうおわかりだと思いますが、このメニューでは、成長発展はありません。
After2(「お客様目線」のメニュー):大判ラミネートタイプ
こちらは、大判ラミネートメニュー。
さらにシンプルでわかりやすいメニューを追求してこの形状になりました。
常にメニューを見直し、来店される「お客様目線」でメニューをつくることで、だんだんとメニューのクオリティが上がりました。
こちらのお店は今では多店舗展開されるようになり、今後もさらに成長していくと思います。
なぜ、失敗しているメニューブックが生まれてしまうのか?
失敗しているメニューの本質的な原因はという話をしました。
以下の項目でひとつでもチェックが入れば「作り手側目線」のメニューである可能性があり、要注意です。
お店のオーナーがセルフチェックすることと、現行のメニューを他人から評価してもらって客観的な視点でチェックしてみましょう。
- 看板メニューがわからない(もしくは無い)
- 写真が痛い(料理がおいしそうに見えない)
- メニューブックがぼろい(または汚れている)
- 店舗のコンセプトとメニューデザインがあっていない
- とにかく見にくい
チェックがひとつでもあるお店でも、安心してください。
「成功する」とは言わないまでも「失敗しない」メニューブックを作ることを目指しましょう。
看板メニュー
「お店の「ウリ」となる看板メニューを明確に打ち出す」
これはメニューブックを作成するにあたって最も重要なことだと思います。看板メニューはいわばお店の目玉です。
わかりやすく表現することが必要です。それには美味しそうに見える写真や特徴、なにが「ウリ」なのかをテキストで補足しておく必要があります。
例として、鉄板餃子が看板メニューの居酒屋があるとします。
表紙をめくったはじめのページを制作してみました。
看板メニューを1ページ丸ごと使い、さらに一番の「ウリ」の鉄板餃子の写真はデカデカと使います。
右のキャプションに「旨さの秘密」として、3つの項目を挙げています。その下の水餃子は3つ同じ大きさで均等に配置します。
価格はどうでしょうか。鉄板餃子は380円でその他3つの水餃子は490円です。
価格帯をそろえることでお客様はオーダーしやすいのです。
来店するほとんどのお客様は鉄板餃子を頼むでしょう。
居酒屋で8ページのメニューで1ページ丸ごと餃子ページにしてしまう想定ですので
少し大げさかもしれませんが、看板メニューを明確に打ち出す、ということはこのようなことなのです。
コンセプト
「メニューブックのデザインと形状は店舗のコンセプトに沿ったものにする」
メニューブックを作成する前の手順として、お店はどんなコンセプトで始めたのか?(またはこれから始めようとしているのか?)ということを
再確認することからはじめてみましょう。お店のコンセプトは、言い換えればオーナーの想いです。
どんな想いでそのお店を開店したのか(または開店しようとしているのか)を考えてみてください。
来店されるお客様像、お店の「ウリ」となる看板メニュー、食材へのこだわり、いろいろとオーナーの想いはあるはずです。
その想いがメニューブックにリンクしていなければなりません。
価格表記
「わかりやすく選びやすい価格帯にする」
メニューブックに表示してある価格がスーパーやドラッグストアのように、たくさんの価格帯で表示されていたらどうでしょうか。
100円以下のものから1000円以上のものまで、それも1円単位で表示されていると、「見にくい」「わかりにくい」「選びにくい」感じがします。
380円/480円/580円と10円単位の数字を揃えたり、金額が近いものは統一したほうが来店したお客様にとっては、「わかりやすく」「選びやすい」のです。
また、税別価格表記の場合は、お客様の利便性・分かりやすさを考えると早急に税込み価格へ修正する必要がありそうです。
次に、メニューの価格はどのように並べたら良いでしょうか。
いろんな意見がありますが、私たちは原則、安いものから順番に記載していくように提案しています。
これは人間の心理的に安いものから並んでいた方が安心するためです。
逆に高いものがメニューの一番目立つ位置に陣取るようなメニューは、「この高いメニューを頼んでね」という意図が丸見えです。
また、よくあるのは、高いものや安いものがランダムに配置されていると、「選びにくい」メニューになってしまいます。
ただし、看板メニューやメニューに強弱をつける意味では、スポット的に価格が高いものが上位にくることがあっても構いません。
あくまで原則として安いものから順番に配置されることをお勧めします。
写真撮影
「写真撮影は自撮りか、プロ撮りか?」
プロに頼めばコストはかかりますが、品質は安心です。
一方、自分で撮影すれば外に出るお金はゼロですが、品質が不安です。(実際には機材購入や自分で撮る時間があるのでゼロではないですが…)
プロ並みの腕をお持ちの方は自分で撮影しても構いません。
要するに、オーナーがどのレベルのメニューの完成を目指しているのか?に尽きるのです。
今は、デジカメでもきれいにプロっぽい写真が撮れるようになりましたし、スマホでもそこそこの写真が撮れるだけでなく色調整などの補正等、素晴らしい機能をもったアプリもあります。
また、写真が好きな人ならば、セミナーやスクールに行って勉強して短時間で腕を上げることも可能です。
繰り返しになりますが、どこを目指しているのかで選択は違うわけです。
質の高い写真を追求するならプロ撮り、コストを抑えて撮るのなら自撮り、というのが我々のスタンスです。
スマホのアプリを使ってどれくらいのレベルで補正ができるか以下の写真で試してみました。
左側がスマホで撮影した生のデータです。そこから、明るさ、彩度を調整して右のような写真にまで補正をしました。
どうでしょうか?スマホでも補正がうまくできれば、暗くて美味しそうには感じない写真も、
なんとなく美味しそうな感じに仕上げることができます。
デザイン
「デザイン製作は、自作か業者へ頼むか?業者選びはどうするか?」
・自作が業者か?
コスト・時間・品質・店舗コンセプトのバランスで選択するのが良いと思います。
No. | 企画 | デザイン | メニューブック | 印刷用紙(中面) |
---|---|---|---|---|
1 | 自作 | 自作 | 自作 | 自作 | 2 | 自作 | 自作 | 既製品 | 自作 |
3 | 自作 | 自作 | 外注(オリジナル) | 外注 |
4 | 自作 | 外注 | 既製品 | 自作 |
5 | 自作 | 外注 | 外注(オリジナル) | 外注 |
6 | 外注 | 外注 | 外注(オリジナル) | 外注 |
これ以外にもパターンはありますが、多くはこの中のどれかのパターンになるかと思います。
「企画」とはメニューの設計のようなことで、どんなメニューの形状にしたいか、メニュー点数やカテゴリー分けなどの作業です。
企画段階からすべてお手伝いするパターンが「No.6」になります。
得意なゾーンは自作して、苦手なゾーンは業者へ頼む。それを基本的な考え方としても良いですが、これもオーナーの考え方次第です。
・業者選びはどうするか?
メニューを得意にしている業者でなくても、デザイン〜印刷をして納品することは、印刷系企業ならおそらく対応可能です。
しかし、その会社の経験や実績はやはり重要です。印刷機を保有してチラシやパンフレットを得意にしている会社と、
飲食店向け専門、また経験豊富な企業とは、提案する内容や対応の幅に大きな差があるのが現状です。
メニューブックはお店の顔であり、スタッフの一員であり、お客様との大事なコミュニケーションツールです。
だとしたら、メニューは専門の業者もしくは経験豊富な会社と相談しながら決めていく方が、
「失敗しないメニューブック」となる可能性は高くなります。
当社でなくても、メニューブックが得意な会社はいくつもありますのでじっくり見聞きして業者選定をしましょう。